Citations:足元

Japanese citations of 足元

• 1888, 三宅花圃, 藪の鶯:

  媚をささげて足元にまつわるを眼もて制し。

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• 1896, 広津柳浪, 今戸心中:

  吉里さんの花魁、危のうござんすよ」と、頓興な声を上げたので、一同その方を見返ると、吉里が足元も定まらないまで酔ッて入ッて来た。

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• 1899, 清水紫琴, もつれ糸:

  酒に靡へてか、よろめく足元危く、肩には、古ぼけた縞の毛布をかけていたが、その姿から見ると、車夫ででもあろうか。

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• 1904, 河口慧海, チベット旅行記:

  さあ殺せと言ってラマの足元へ坐り込んで眼をつぶって夢中になって、さあ殺せそこに刀があるからその刀でもって殺せ。

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• 1906, 島崎藤村, 破戒:

  蹣跚とした足元で直に退職の敬之進と知れた。

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• 1908, 夏目漱石, 坑夫:

  すると長蔵さんは草鞋の紐を結んで、足元に用がなくなったもんだから、ふいと顔を上げた。

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• 1910, 大下藤次郎, 白峰の麓:

  枯草を分け熊笹の中を押してゆく、足元から俄に二つの兎が飛び出す。

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• 1912, 森鴎外, 鼠坂:

  一同が立ち上がる時、小川の足元は大ぶ怪しかった。

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• 1913, 徳田秋声, 爛:

  浅井は足元の崩れだした山腹の小径に踏み留まって、お増の手に掴まった。

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• 1914, 永井荷風, 江戸芸術論:

  今これら歌麿が美女の長く身にまとひたる衣服の着様を見るに腰と腿のあたりにて宛ら延板を当たる如くに狭く堅く引締められ下の方に行くに従ひて次第に寛く足元に至りて水の如くに流れ渦巻きたり。

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• 1915, 上司小劍, 太政官:

  兩側には青々とした麥の穗が波のやうに、小石を踏んだ妻の足元には、陽炎が燃えた。

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• 1916, 素木しづ, 咲いてゆく花:

  すると、彼女は足元から蒸すような熱さを感じて、めまいがすると、そのまゝくら／＼と倒れようとした。

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• 1918, 伊藤野枝, 転機:

  冬ではあるが、それでも、こうして立っている足元から前に拡がったこの広大な地に、目の届く処にせめて、一本の生々とした木なり草なり生えてでもいることか、ただもう生気を失って風にもまれる枯れ葦ばかり、虫一匹生きていそうなけはいさえもない。

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• 1919, 芥川龍之介, 路上:

  が、卓子を離れるとなると、彼は口が達者なのとは反対に、頗る足元が蹣跚としていた。

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• 1920, 菊池寛, 真珠夫人:

  勝平は、さう云ひながら、再び猿臂を延して、瑠璃子の柔かな、やさ肩を掴まうとしたが、軽捷な彼女に、ひらりと身体を避けられると、酒に酔つた足元は、ふら／＼と二三歩｜蹌めいて、のめりさうになつた。

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• 1923, 横光利一, 日輪:

  そうして、彼の片眼は、暫時の焦燥に揺られながらも次第に獣的な決意を閃かせて卑弥呼の顔を覗き始めると、彼女は飛び立つ鳥のように身を跳ねて、足元に落ちていた反絵の剣を拾って身構えた。

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• 1924, 南部修太郎, 病院の窓:

  が、それでもそんな事を續けて行く内に、私の足元は一日一日と固まつて行つた。

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• 1925, 北原白秋, フレップ・トリップ:

  と、急に足元から鳥の立つような騒ぎになって切符を申込む、印旛沼へ電報をうつ。

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• 1926, 豊島与志雄, 犬の八公:

  すると子犬は、くんくん泣きながら、彼の足元に寄つてきました。

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• 1927, 里村欣三, 放浪の宿:

  生欠伸を噛みしめながら土間におりて行くと、その足元にどたりと犬の死骸が落ちた。

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• 1928, 妹尾韶夫, 凍るアラベスク:

  そして暫くして、やっと氷から眼を離して足元を見ると、そこに劇薬を嚥んだらしい銀三が、かすかな微笑さえ浮かべて、石の如く凍って倒れていた――結婚の饗宴にでも出かけるような燕尾服を着て……。

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• 1929, 小林多喜二, 不在地主:

  はずみで、足元の砂がズスズスッと、めり込んだ。

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• 1930, 矢田津世子, 反逆:

  青い月の光りが、足元の水を深く見せていた。

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• 1931, 坂口安吾, 竹藪の家:

  足元に心を配り、忍び足して厚い朽葉を踏む音であるが、二足三足するたびに暫く杜絶えるところをきくと市へ出る農夫達の筍を掘る音であらうか。

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• 1932, 佐々木味津三, 流行暗殺節:

  ――屋守のように塀板へ平みついて、じっと首を垂れ乍ら、ころころと足元の小石にいたずらをしていたが、突然クスクスと笑い出したかと思うと、吐き出すように言った。

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• 1933, 徳田秋聲, 和解:

  「彼奴もどうも、何か空想じみたことばかり考へてゐて、足元のわからない男なんだ。

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• 1934, 大阪圭吉, とむらい機関車:

  続いて彼等は足元に転っている凄惨な女の生首を見ました。

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• 1935, 小栗虫太郎, 潜航艇「鷹の城」:

  朝霧のために、防波堤の形は少しも見えないのであるが、その足元で、砕ける波頭だけは、暈っと暗がりのなかに見えた。

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• 1936, 蘭郁二郎, 魔像:

  水木が、あわてて制したのも、無理ではなかった、水木の足元には薄い襦袢一枚の若い、健康そうな娘が、のびのびと寝ているではないか……。

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• 1937, 岡本かの子, 母子叙情:

  そして銀座の散歩も、もう歩き足り、見物し足りた気怠るさを、落した肩と引きずる靴の足元に見せはじめた。

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• 1939, 海野十三, 火星兵団:

  だが、足元には、細紐一本すら、落ちてはいなかった。

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• 1940, 金史良, 天馬:

  が、そのとたんに落ちていた桃の枝に足元がひっかかったので、彼は咄嗟にそれをすくい上げて抱え込みながら喘いだ。

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• 1943, 波多野精一, 時と永遠:

  現在に耽溺して足元の地盤が絶えず動搖し絶えず非存在へと消え行くに氣附かぬ文化人は、死の實相を正面より見詰めるを怠つて乃至嫌つて、死を生の一形態と見る幻覺に知的乃至情的滿足を貪る。

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• 1944, 三好十郎, おりき:

  百姓　ハハハ、ハハ（相手の、足元から火が附いたような、あわてかたに笑う。

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• 1946, 織田作之助, それでも私は行く:

  お雪は幹男の足元に坐って、じっとうなだれていた。

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• 1951, 宮本百合子, 貧しき人々の群:

  誰に顔を見られるのも、口を利かれるのも堪らない心持でのろのろと足を運んでいると、いきなり後から唸りを立てて飛んで来た小石が、私の足元で弾んで、コロコロと傍の草中へ転がり込んでしまった。

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• 1952, 相馬愛蔵, 私の小売商道:

  よく相手の足元につけこんで、徹底的に値切り倒し、あるいは些少の金利を目あてに支払いを延期するなど、これを称して商売のかけ引の上手のように教える人がありますが、これはとんでもない誤りであります。

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• 1955, 邦枝完二, おせん:

  どやしつけられた、背中の痛さもけろりと忘れて、伝吉は、元結が輪から抜けて足元へ散らばったのさえ気付かずに夢中で長兵衛の方へ膝をすり寄せた。

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